突然ですが、問題です。
「X100V」
これ、読めますか?
「…え…えっくすひゃくぶい…?」
はい。
正解です。
では「Dragon Quest V」は?
この字面を見ると、昭和のキッズは自然に「ドラゴンクエストファイブ」と読めてしまうものです。
そう、V=5でもあるわけです。
…というわけ(?)でFUJIFILMの名機、5番目のX100を購入してみました。
初代のFinepix X100が発売された2011年当時は、なんちゅう贅沢なカメラが出たものか!と驚いたものです。
ミラーレスでありながらも光学式ファインダーを搭載。
しかも光学ファインダー内に露出設定などが表示される謎技術。
デジタル一眼と同じくAPS-Cサイズのセンサーを搭載しながらも、なんとレンズ固定式。(つまり、コンデジ)
そしてフルサイズ換算で35mm/F2.0というビミョーな画角&明るさのレンズ。
当時としてもかなり控えめな1230万画素。
見た目はLeicaによく似た、レンジファインダーカメラのようなレトロスタイル。
それでいて実売価格は13万円程度と、デジタル一眼の入門機よりも断然高い。
「誰が買うねん!!」と思ったものです。
ところが2022年現在、X100シリーズは
・初代X100
・2代目X100S
・3代目X100T
・4代目X100F
・5代目X100V
と、着実にアップデートを重ねてきました。
センサーこそ世代を重ねて進歩してきましたが、驚くべきことに初代から4代目までは全く同じレンズを搭載。なんでやねん。
でもこの潔い仕様がウケてか、X100シリーズはカメラ業界でもかなりのベストセラーかつロングセラーのシリーズになったわけです。
というか今FUJIFILMの主力であるミラーレス一眼「X」シリーズの魁が、このカメラだったわけで。
X100愛が高じて、シリーズを全機種持ってる人も結構いるとか。なんでやねん。
なんでこんなワケワカラン不便なカメラが売れちゃったのか?
見た目とか初代からほぼ変わってないし。
しかも現行機種は定価20万円くらいしますからね。狂っとる。
売れた理由…
ちょっと乱暴な言い方をすると、X100シリーズって現代版「写ルンです」なんですよね。
「いやいや、それはあまりに乱暴過ぎるやろ。ランボー3/怒りのアフガンやろ…」という声が聞こえてきそうです。(は?)
しかしながら、両者に共通してるのは「もう撮るしかない」っていうところなんですよね。
「写ルンです」自分好みにカスタムできますか?
できませんね。
せいぜい外装にマッキーで落書きする程度です。
レンズは32mm固定やし、そもそも使い捨てカメラやし。(レンズ付きフィルムって呼ばないと怒られるらしい)
X100は…まあちょっとくらい見た目とかカスタムできますが、カメラの基本性能はカスタムのしようがありません。だってレンズ固定式やから。
つまり両者は所有者の嗜好が入り込む余地がほぼないくらい、純粋な「写真機」と言えるかと思います。
そのカメラを手にすると、ただただ写真を撮る以外にすることがないわけです。
修学旅行で撮った「写ルンです」が現像から返ってきた時、思ったように撮れてなかったことありませんか?
地獄みたいに暗い陰気な写真や、全員の目が赤く光った不気味な写真。かと思えばめっちゃ白飛びしたワケワカラン写真。
…それもそのはず。
「写ルンです」は感度400のフィルムにF10の暗くて固定フォーカスのプラスチックレンズが1枚。シャッタースピードは1/140秒固定。
晴天の屋外でなければ、フラッシュを焚かないと撮れないわけです。
そういう融通が利かないシンプルな仕様やからこそ「写ルンです」は低価格を実現し、広く受け容れられ、ただただ写真を撮るためだけに存在意義がありました。
X100は「写ルンです」と比べたら、ほんのちょっとだけ便利です。
ファインダーは光学式と電子式を瞬時に切り替えられ、撮った写真はすぐに液晶モニターで確認できます。
もちろんオートフォーカスだって、それなりに効きます。
でも、レンズは35mm/F2.0(フルサイズ換算)のみ。(デジタルテレコン?知りませんねぇ〜)
被写体を大きく撮りたければ自分が近づくしかないし、その逆もまた然りです。
手ブレ補正なんてオシャレな機能もありません。
この便利な現代においては、飛び抜けて不便なカメラやと思います。
けれど不思議なことに、このカメラを持って出かけると、めっちゃ沢山シャッターを切ってしまいます。
「あの山をもっとアップにして撮りたいから、200mmのレンズに交換やな…」
とか
「建物全体を収めたいから12mmやな…」
とか
そもそも、そんなことを考えることがありません。
だって35mmでしか撮れへんから。
「あの山のダイナミックさをどう撮れば表現できるか?」
とか
「この建物をカッコよく写すにはどう撮るか?」
とか
コレはめっちゃ工夫します。
自分で寄ったり引いたり試行錯誤してるうちに(失敗写真も含めて)沢山シャッターを切っているというわけです。
あと、色がとても良いですね。
フィルムカメラの時代から、FUJIFILMは記憶色に力を入れているメーカーでした。
現実に目で見てどんな色か?というのはさておき、
「あの時、こんな色やったな〜」
みたいに思い返した時の、感覚的な色表現が優れていると感じます。
ひと言で言うなら「エモい」に尽きます。
これは、デジタルでは稀有なことです。
フィルムシミュレーションも素晴らしいです。
「今日はこのフィルムシミュレーションで撮るぞ」と決めたら、その日はもうずっとそのまんまにしてます。
なので、仕事以外でRAW現像やレタッチをすることが無くなりました。
撮るにあたって意識することは
「縦・横どっちで撮るか」
「近寄る・離れる」
「絞り・シャッタースピードどうする?」
これぐらいです。
あとは全て雑念・邪念の類で、もはやフォーカスがバッチリ合ってるかどうかすら結構どうでも良い。
そのくらい撮影そのものに没頭できるのが、X100Vの良いところやな〜と感じています。
そうそう。
4代目まで同じやったレンズは、5代目にしてついに少し進化しました。
今まで絞り開放のF2.0やと「フワッ」とした写りやったのが、開放でも「パキッ」と写るようになったようです。
レトロな見た目でも現行機種は2600万画素と高画素なので、レンズも刷新する必要があったんでしょうね。
ただ、開放が「フワッ」としてるのがX100シリーズの個性だそうで…新しいレンズの仕様は、先代までのユーザーからはちょっと不評なようです。なんでやねん。
何もかも便利かつ高性能で先進的なものが最高ではなく、あえてローテクの美学というのがウケる層もあるのだなぁ、と。
まあスペックの話はいいです。
ちなみに僕は100V買いましたが、シリーズ初代から今でも全然現役バリバリで使える性能してると思います。
興味ある方は是非。
とにかく撮ることに集中できて、撮ることそのものが楽しい。という、X100シリーズのコンセプト(知らんけど多分)には全面的に賛成です。
慣れないインターフェイスと慣れない画角に、今日も僕は試行錯誤を繰り返しております。
ほなまた!
ハセガワ