今回は特に、前回までの記事を全て読まれていることを前提に書いています。
正直なところ異常なほどマニアックな内容なため、バスフィッシングに全く興味のない方はゴメンナサイ。
何十年にも渡り、三つ巴の戦争が起こっています。
「政府は何をしている?」「国連は?」など、他者の介入でどうにかならないものかとは思うのですが…これは国同士ではなく、釣り人の間で起こっている静かな戦争なんです。
今回は荒れそうなので伏せ字でいきます。
でもバスフィッシングを語るうえで外せない話題なのです。
S社とD社とA社。
AはぶっちゃけSとDよりちょっと弱いのと、日本から撤退しかけているのと、あと特に革新的な技術は持っていないので今回は省きましょうか。(もう怒られそう笑)
それでも十分ややこしい話なので。
さて。
原理主義的な話になりますが、皆さんはブラックバスってどこにいると思いますか?
いきなり「はぁ?」って感じでしょうが…いや、もちろん池や湖や川にいるんです。
そうじゃなくて
・ブラックバスは遠くにいる
・ブラックバスは近くにいる
この考えの違いにより、釣り人達は長らく戦争をしています。
先に言っておきます。
僕はどちらかというと、D派です。
元々はS派でしたが、釣り歴2年目の2019年に改宗しました。ゴメンナサイ。
今でも、いくつかの機種だけはSのものを使用しています。
そういう機種がSにしか無いので。そんなところもゴメンナサイ。
もちろん両方使っても良いのですが、どうしても軸足がどちらか?という話題になるので…
「遠く投げた先にバスはいる」
「キャストフィールを追求したい」
「巻き心地も重視したい」
Sはそれらを自社のベイトリールの矜持としました。
消しゴムは、その摩擦抵抗によって鉛筆で書いた文字を消します。
平たくいえば、遠心力ブレーキとはそういう原理で動作します。
スピードを出すのは簡単で、減速させることにこそ技術が必要になる。
「摩擦抵抗でブレーキをかける」(車や自転車、バイクと同じですね)
このシンプルな構造を持つのが、S社のベイトリールです。
メリットは先に挙げた通り。
デメリットは、スプール低回転時にブレーキが全く効かないところです。
遠心ブレーキはキャスト初速で最大のブレーキ力を発揮します。
キャスト後半でブレーキがスプール(のブレーキパイプ)に接触しないため、抜けるように飛んでいく弾道が魅力です。
当然、飛距離は伸びます。
着水時にしっかりとサミングする必要があるのも、遠心ブレーキの特徴です。(しないと即バックラッシュ)
原始的なシステムながら、S社の技術力で年々ブラッシュアップを重ね、今でも一線級の性能を維持しています。
どちらかというと上級者向けのリールがSのベイトリールですね。
「近距離にこそバスがいる」
「安定性を追求したい」
「軽快さを重視したい」
これがD社のベイトリールの特徴です。
D社のマグネットブレーキとは、航空アルミニウム合金製のスプールに取り付けられたアルミニウム製のインダクトローター(円筒状の金属パーツ)と、リール本体に取り付けられた焼結ネオジムマグネットによってブレーキをかけるシステムです。
「待て待て待て」と思われる方もいるかと。「アルミニウムは非磁性体やろ?」と。勿論その通りなのですが、マグネットブレーキはそういった単純な構造ではありません。
磁力ではなく、スプール回転による「渦電流を利用した電磁誘導ブレーキシステム」が、D社のブレーキの主なテクノロジーです。
作動原理は…調べてみてください笑(実は電車やハイブリッドカーなどの回生ブレーキにも使われています)
昔のマグネットブレーキは固定式のインダクトローターしかなかったので、低回転から強めのブレーキがかかって「飛距離が出ない」と言われていました。
現在では可変式インダクトローターの採用により、低回転時はわずかにブレーキをかけ、高回転時は強いブレーキをかけることが可能になっています。
機種によってブレーキ特性を変えていて、特にトラブルレスを謳っているものでは、キャストの最初から最後まで一切サミングをしなくてもバックラッシュを起こさないほどです。
低回転時でもブレーキ力がゼロにならないのが、マグネットブレーキのメリットであり、デメリットでもあります。(船釣りで垂直にジグを落とし込む時など、スプールの回転抵抗になり得るので)
いずれにせよ、マグネットブレーキの特筆すべき点は、このトラブルレス性能にあるといえるでしょう。
両者の特徴を述べたタイミングで、元も子もないような話をします。
実は普通にバスフィッシングを楽しむにあたって、どちらのメーカー(ブレーキシステム)のベイトリールを選んでも、特に支障はありません。
しかし突き詰めて自分の釣りのスタイルを明確化・先鋭化していくと、自ずとメインで使用すべきメーカーが見えてきます。
最初に僕がD社贔屓であることをお伝えしました。なぜなのか?それをこれから説明します。
バスフィッシングにおいて、釣り場の状況は2つに大別できます。
①オープンウォーター(何もないひらけた釣り場)
②カバー(障害物を含む複雑な釣り場)
これは
①飛距離が必要な釣り場
②安定性が必要な釣り場
と言い換えることができます。
さらに言い換えるとすれば
①バスが遠くにいる場所
②バスが近くにいる場所
とも。
あなたはどちらで釣りをするのが好きでしょうか?
どういう釣りをしたいですか?
バスはどこにいると考えていますか?
今回の記事の最初に戻りますが、この話題こそが、主に使用するベイトリールを決める分水嶺となります。
僕の経験則として、これまでに釣ってきたブラックバス(特に大型)の大半は、近距離の込み入った場所で釣れています。
遠くにある、何も障害物がない場所ではありません。(あくまでも僕が釣りをしている場所では!という話)
つまり僕にとってのバスフィッシングは、概ね遠投する必要がありません。
「近距離にいるなら簡単やな」と解釈するのは早計で、近くにいるバスを狙うからこそ、立ち回りには細心の注意を払います。
…バスってものすごく賢いんです。バスを馬鹿だと思って釣りしている人ほど、釣れません。
相手に姿を見られない立ち回りは勿論、自分自身の影や少しの物音。
ルアーが着水する音や、糸を上手く隠す方向からのキャスト。
これらは全て釣果に影響します。
僕はそれらの所作も含めて、バスフィッシングを楽しんでいるタイプです。
障害物の間をすり抜けてキャストし、意識外から投げ込まれたルアーを疑いなく食ってくる。
そんなバスをフックアップし、強いロッドと太いラインで抜きあげて釣る。
それが最高に楽しいです。
ハイシーズンの日中、僕はずっとそんな釣りをしています。
そんな釣り方においてリールのライントラブルは、狙っていたバスを釣り逃してしまう大きなリスクとなります。
なので僕はS社の遠投性やキャストフィールよりも、トラブルレス性能を重視したD社のリールを愛用しています。
とにかく遠くまでブッ飛ばしたい方はS社推奨です。
どんなベイトリールを買うかで悩まれている方は、上記を参考に自分のスタイルに合ったものを選んでくださいね。
今回も番外編の話をしていきましょう。
・遠心力ブレーキ
・マグネットブレーキ
これらがベイトリールで使われている、主なブレーキシステムです。
例外として
・デジタルコントロールブレーキ(以下、DCブレーキ)
というものがあります。
DCブレーキはS社が開発した技術です。
2003年にカルカッタコンクエストに搭載されて以来、同社のフラッグシップ級モデルはDCブレーキ搭載機となりました。
キャスト時に鳴る「キーーーン!!」という電子音が厨二病ごころをくすぐる、特徴的なベイトリールです。(所謂DC音)
では、DCブレーキってどんなものなのでしょうか?
簡単に解説します。
身も蓋もない言いかたをするならば、DCブレーキ=マグネットブレーキです。
D社のベイトリールで一般的なアナログ式のマグネットブレーキは、スプールに搭載されたインダクトローターが回転数に応じた遠心力でマグネットの磁界を出入りすることにより、ブレーキの強弱を調整しています。
対してDCブレーキは、スプールに搭載された素子をリール本体のセンサーが読み取り、スプールの回転数に応じて電気的にブレーキ力を細かく調整するという機構です。
これによってDCブレーキ搭載機は、風などの外的要因によるバックラッシュの発生を抑制することができます。
電池が必要なのか?と思われるかもしれませんが、そうではありません。DCリールはスプールの回転によって発生する回生電力をリール内部に蓄電しているからです。
限界までブレーキを自動制御できるため、熟練者のサミングのように細やかな制御でバックラッシュを抑えながら、遠投することも可能です。
車でいうところのオートマチックトランスミッションのようなシステムで、荒れたコンディションに強く、安定性は極めて高いです。
近距離キャストやピッチングなど、スプールの回転数が上がりきらない場面では、DCの効果が発揮されないというデメリットも。(最近のDCリールは低回転でも概ね作動しますが)
どちらかというと遠投向きのリールなので、僕は冬場などバスが池の真ん中の深場に潜った時に遠投するために、DCブレーキ搭載機を活用しています。
冬場は手が繊細に動かせなくなるので、サミングを機械任せにしたいのもあります笑
最近はD社もDCブレーキに近いシステムを搭載したリールを販売していますね。(定価13万円は草)
DCをATだとすれば、アナログの遠心力ブレーキやマグネットブレーキはMT。マニュアルトランスミッションのようなものです。
ブレーキを制御するのは自分自身であり、トラブルも概ね自分のテクニック不足に起因します。
ATは楽ですが…使っていて面白いですかね?僕はそこそこ技術介入の余地があるリールを好みます。
一連の記事の最初に書いたように、ベイトリールを含むタックルを自在に操ることは、バスフィッシングの大きな楽しみだと僕は考えています。
で、最初に書いたリールの宗教戦争のようなものなのですが…
デザインが好き!でも、ブランドイメージが好き!でも、所属しているプロが好き!何でも良いです。
最近のリールは総じてめちゃくちゃ性能が良い。
好きなメーカーの好きなリールを使ってください。
リールはあくまで道具です。
肝心なのは、実際に釣り場でバスフィッシングを楽しむことですから。
というわけで、リール選びに悩むよりも、実際に池に行ってバスを釣れ!というはなしでした。なんじゃそら笑
ここまでは純粋な座学でしたが、ここからは実践的な話になっていきます。
もはや誰も読んでないような気もしますが、まあいい笑
次回は「実際にどうやってバスを釣るか」です。
もし万が一このご時世にバスフィッシングを始めたい!と思う奇特な方がいたら、遠慮なく僕にご相談ください。マジで。
ほなまた!
ハセガワ